今日も匠がお祭りの準備の手伝いに来てくれた。
その後で小奈美と治まで来てくれた。
それは嬉しかったんだけど・・・
私たちのこと、すっかりバレてたみたい。
まぁそもそも、小奈美には「頑張ってね」と言われてたわけだしね。
それが何に対してかは分からないけど―――
「あれ?小奈美はまだ帰らないのか?」
「うん。実は今日、信乃の家にお泊りなんだよ。」
「ええっ!?そうなの?じゃあせっかくだからみんなで泊まっちゃわない?楽しそうじゃん。」
「ダーメ!あんたたちはとっとと帰る!!」
「え〜〜なんでだよ〜。ケチケチするなよ〜〜。」
「ぺっぺっぺーだ!女の子にはいろいろあるのよっ!」
「さては信乃・・・ダメだぞ、いくら小奈美ちゃんがかわいいかrゴフッ!!」
「匠っ。これも持って帰ってよ。」
「・・・んじゃまた。」
帰っていく匠と治。
・・・正直匠にはもうちょっと勇気をもらいたかったけど、仕方ないよね。
今日の夕飯は、小奈美と一緒に作った。
料理のこと、いろいろ教えてもらっちゃった。
「今日はありがとね。いろいろ教えてくれて。それに夕飯の準備まで一緒にしてもらっちゃって。」
「いいよ。気にしないで。」
「けど、やっぱ小奈美はホント凄いよね。どんな料理でも作れちゃうんじゃないかって思うくらい。」
「そんなことないよぉ。信乃なら私くらいあっという間に抜いちゃうよ。」
「あ、あは・・・それはいくらなんでも厳しい気が・・・しっかしうちの親は子供ほっぽり出して何してるのかね〜。」
「あはは。もう信乃なら充分やれると思って安心してるんじゃないのかな。」
「全く・・・みんな一体どこを見てるのやら。あ、そういえばこないださぁ――」
と、たわいない世間話をしながら楽しく夕食を終えた。
どれも美味しくて、やっぱり小奈美は凄いと痛感した。
どうやったらここまでうまくなれるんだろう・・・
私も頑張らないと!!
「小奈美、後片付けは私がやっとくから先にお風呂入っちゃってよ。」
「え、でも・・・」
「いいからっ!ちゃっちゃと入る!」
「ふふ、ありがと。」
そして小奈美があがるのを待ち、私がお風呂に入った。
いつもより少しテンションが高い小奈美が珍しかった。
もう頭は洗った。
体も洗った。
気持ちは・・・うん、多分大丈夫。
後は私の心ひとつ。
・・・
「よし!!行きますかっっ!!」
気合一発、私はお風呂から飛び出した。
着替えを済ませ、深呼吸をひとつ。
そして居間に入った。
「・・・小奈美?」
小奈美の姿が見えなかった。
「・・・そっか、あそこか。」
いつも水垢離をしている滝。
今日私達が事実を伝えた場所。
そして・・・多少の音であれば、かきけしてくれるであろう場所。
外に出た。
夏だというのに、空気は少し冷たくて、凛とした雰囲気を纏っていた。
そんな中にぽつんとひとり灯る光は、弱弱しくて今にも消えそうだった。
声を掛けず、ただ隣に並んだ。
「っ・・・く。あは、ここは夏でも涼しいね。」
何かを擦るような音がしてから、小奈美がそう言った。
まだ顔はあわせてないけど、小奈美の表情がわかる。
まるで手に取るように。
「小奈美、いいんだよ。私が今日小奈美を呼んだ理由、分かってるんでしょ?」
「あ、あは。信乃、何言って・・」
小奈美をぎゅっと抱き締めた。
「私、小奈美とはずっと親友でいたいから。小奈美を受け止めたい。小奈美は、ある時からあんまり自分の想いを口にしなくなったしね。」
「・・・信乃・・・」
静かだった。
水と小奈美の心臓の音が優しく響いていた。
そんな穏やかな時間が少し流れて。
「・・・うん。私はね、ずっとずっと、子供の頃からたっくんが好きだった。・・っ・・それでね、ある時・・・私とたっくんだけの秘密基地っていうのがあるんだけどね、そこでたっくんが好きって言ってくれたの。」
「っ・・・」
正直凄く驚いた。
二人の過去にそんなことがあったなんて。
「もちろんものすごく嬉しかったよ。・・・でもね、その時私はたっくんに何も言うことができなかったの。言葉にするとね、無くなってしまいそうで・・・結局その後お母さん達に見つかって・・・あそこ、立ち入り禁止だったでしょ?だから凄く怒られて。」
「あ、もしかして・・・少しの間だけ二人が疎遠になったのって。」
「うん、この時だね。で、暫くしたらまた仲直りはできたんだけど、そのうちにたっくん、このこと忘れちゃって。私は悲しさ半分、嬉しさ半分ってところだったよ。嫌われたんじゃないかなって思ってたから・・・」
「だからそれ以来、そのことには触れてないの。もし・・・もし、たっくんがもう一度私のことを・・・くっ、す、好きだって言ってくれたら話そうって。そう決めてたの。あは、もう話すことはなさそうだけどね。」
私を抱き締める小奈美の手が震えている。
「私は・・・だからたっくんにもう一度好きになってもらいたくて・・・何でも頑張った!お料理は美味しくできたらたっくんが笑って褒めてくれるっ。う・・・勉強だって家事だって、なんだってたっくんの笑顔のためにやったよ。それをちっとも辛いとは思わなかったっ。ぐす・・・私、ずっとずっとたっくんが好き!!ずっとたっくんを、たっくんだけを見てきた!」
「・・・だから、分かるの。分かっちゃうの。たっくんが誰を見てるかくらい。分かっちゃうんだよ・・・うぅ。あれ以来、あのときの目で私を見てくれることはなかった。今、たっくんはその目を・・・っ・・信乃に向けてるの。そのことがはっきり分かったから、私は頑張ってねって・・・あはは。信乃なら、間違いなくたっくんを幸せに・・・っう・・・してくれるって、わかるから。あは。あはは・・・う、うぅ・・・」
「小奈美っ・・・小奈美・・・ぐす・・・ごめん、ありがと。ごめんっ!う、うぅ―――」
小奈美と二人、声を上げて泣いた。
夜風が、そんな二人をやわらかく包んでくれた。
ひとしきり泣いて、その後は一緒に寝た。
そして太陽が昇り、また暑い一日が始まる。
そしてあの人がやってきて・・・
「おう、信乃っ、小奈美っ。おはよう。」
「おはよっ!さぁ、今日もバリバリ働いてもらうわよっっ!!」
「えぇっ!?す、少しは遠慮してくれないか?」
「ぺっぺっぺーだっ!ビシバシ行くわよっ!」
「ふふ、たっくん、頑張って。」
「こ、小奈美まで・・・ん?小奈美、昨日何かあったか?」
「え!?う、えと・・・秘密っ」
いつまでも、こうやって。
楽しい時間を過ごしていければいいなと。
そう、思います。